声の届く距離にいてください。
ふう、だいぶお客さんの波も退いたな…
久米さんに淹れてもらった熱いお茶が働いたあとには格別に美味しい
それをちびちび飲みながら、奥で注文の減った店内を眺めていた
「小夜ちゃーん、勘定頼むわ」
「あ、はぁい」
馴染みのお客さんから呼ばれ、小夜はパタパタと向かう
「いつもおおきに、またお越しください」
お客さんが来た時と帰る時には必ず笑顔で。と密かに決めている
だから、八重歯をみせてお礼をする
外に出て見送ると、背後に気配を感じた
「ん?あ、いらっしゃい!」
くるっと振り返ると長身の男がのれんをくぐって三津屋に入ろうといていた
「……」
「お一人ですか?」
「…ああ」
口数が少なくて随分そっけなさそうな人だなぁ…
ま、見た目で判断はしちゃいけないけど
「こちらへどうぞ」
とりあえず席へ案内して、お茶を置く
「決まったらお呼びくださいね」
そう微笑むとふと、男の腰に付いているモノに目をやった
…刀 お侍さまだ
大小差してる、偉い人なのかなぁ
「おい、何をそんなじろじろ見ている」
「あ、」
どうやらまじまじと見すぎたようだ
「すいません、刀…大小差してらっしゃるから偉いお方なのかなって思っちゃって」