君と指切り〜10年の軌跡

すぐ近くのベンチに座りただ真っ直ぐ前を見つめたまま

「ハァー」と深く溜め息をついた。

「一つ溜め息をつくと一つ幸せが逃げるよ」


少し離れたベンチに寝そべりながら漫画を読む男子生徒がいた。
顔はよく見えなかったけど
明るい栗毛色の髪が印象的だった。


「私…それ聞いたことあるな…」

ポツンと呟き
思わず笑みが溢れてしまった。

ベンチから立ち上がり、そちらに目をやると
もう言葉も発する事もなく右手を挙げ数秒間
親指をたてて、また漫画に手を戻した。
それがまるで


“奈都芽元気出して!"

“奈都芽ガンバレ!"

って言われてるような気がして………嬉しかった。


私の冷えきった心が
少し温まった。



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