君と指切り〜10年の軌跡

私は目にタオルを押し充て泣いた。

隣のベッドの境目にある
一枚のカーテンが
そっと開いた事にも気づかずに…


誰かが、私の頭を撫でる。
優しく温かい手。


目に掛かったタオルをずらし確めた。
見覚えのある顔。

第3音楽室にいた男の子だった。

彼は2年のジャージを着ていた。
私は少し恥ずかしくなって
またタオルを目に充てた。

「君、あの時の?」

私はもう一度タオルをずらし彼の顔を見た。

「はい」

「どこか痛いの?」


「…」

身体が痛いんじゃない
心が押し潰れそうなんだ
この痛みは、誰にも治せない苦しくて悲しくて
どうしようもない痛み。

「…心が痛いんだよな」

「…」



“何で、わかるの?"


彼はまた、私の頭を撫でる
そして流れ落ちる涙を
指で拭ってくれた。


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