君と指切り〜10年の軌跡
私は昼休みに第3音楽室に行くことにした。
“柊先輩いるかな"
教室の前まで来たけど、ピアノの音は聞こえなかった。
居ないと思いながら確認だけしようとドアを開けた。
“いた!"
ピアノの前に座っている柊先輩は、いつもと違う様子に思えた。
私に気付いた先輩は力なく
「奈都芽ちゃん」
と言って俯いた。
「柊先輩?」
少し近付いて俯く横顔を
確かめるように覗いてみた。
柊先輩は身体をずらし
「ここ」
と言って空けた椅子の空間を指差した。
私は柊先輩の隣に腰掛け顔を見た。
「俺、今どんな顔してる?」
「あ、あの…この世の終わり…みたいな」
「ふふっ、そうだね」
「どうかしたんですか?」
「優花が学校辞めた」
ショックだった。
私は親しい訳じゃない
柊先輩が好きな
トモが好きな
優花さんだから
一体どうして…