君と指切り〜10年の軌跡
隣に座ってみたけど、何て声を掛ければ良いのだろう。
トモは?
朝、優花さんの事を聞いてしまった。
何も答えなかったけど
きっと辛かったんだ。
少しの沈黙が続き
ようやく柊先輩の口が開いた。
「優花の親父さんが出てきたんだ
2人で親父さんの故郷に戻るらしい」
「柊先輩!伝えなくて良いの?」
「…」
「もう一度伝えなきゃ」
「ムリだよ、また嫌がる」
「嫌がったって、良いじゃない何も言わないで後悔するより
…柊先輩が言葉で伝えたかったこと
言えなかった一言を
ピアノで届けてたんでしょ?」
柊先輩は頷いた。
私は先輩の目を見て笑ってみせた。
「柊先輩、伝えなきゃ…ね」
「奈都芽ちゃん、ありがとう
奈都芽ちゃんも…ね」
“私も?"