身代わり王子にご用心
大抵の女性従業員は桂木さんに微笑み掛けられれば、態度が軟化したり笑顔になる。なのに藤沢さんは不機嫌になった上に、腰に手を当てて桂木さんを睨み付けた。
「それより、なんで水科さんがこんな理不尽な状況にいるのに、上は何もしないんですか! 抗議したって適当な返事ばっかりで本気で聞く気なんてないし」
「それは困ったことだね」
憤慨する藤沢さんに桂木さんは少しだけ苦笑いを浮かべる。事務所で総務担当の彼は本社とのパイプ役でもあるから、当然人事部との関わりもある。
それだから、彼女は桂木さんに直談判したのだろうけど。
「藤沢さん、別にそこまで大事(おおごと)にしなくても……私なら大丈夫だから」
「いいえ! よくありません。水科さんは真面目に頑張ってるのに、どうしてあんなことされなきゃいけないんですか!」