身代わり王子にご用心
藤沢さんが憤慨している最中、めったに着信を知らせない私の携帯電話が鳴ったから、2人に断ってから出てみれば。やっぱり妹の桜花(おうか)からだった。
『お姉ちゃん、仕事終わった?』
「終わったけど、どうしたの?あなた健太朗くんと大切なデート中じゃないの?」
今日はクリスマスイブ……恋人達には大切な一夜だ。
特に五歳年下の桜花は中学から付き合ってきた恋人と過ごす大事な大事な日。それなのに、どうして電話を掛けてくるのかと首を捻れば、スピーカーから妹の興奮気味な声が響いた。
『どうしたの? じゃないでしょう。今日はお姉ちゃんの誕生日なんだよ! 健太朗が一緒にお祝いしよう、って言ってくれたし。ご飯でも食べようよ。レストラン予約してあるから』
「え、いいってば! だいたいあなた、今日はプロポーズされるかもって気合い入れてたでしょう。そんな大切な時にお邪魔するほど無神経にはなれないよ。気持ちは嬉しいけど、今日は遠慮しておく」