身代わり王子にご用心
大切なひと?
なんのことやらだけど、私は即座に否定しておいた。
「あ、違います。桂木さんは私のお買い物に付き合ってくれただけなので。彼とは何の関係も……」
「え~っ? そうなん!? でも、オカシイねえ。カッちゃんがこうやってあたしらに会わせるのは、決まってお気に入りの女の子だけなんだけど」
「えっ……」
聞き捨てならない台詞に耳を疑っていると、男性スタッフの一人がペットボトルを傾けながら呆れたように言う。
「おい、桐子(とうこ)。そんな一方的に喋ったって、意味不明だろ。見ろよ、訳解らねえ顔してる」
「そ、そっか。ごめんね~あたし、すぐ早とちりしちゃって」
ペシッ、と自分の額を指で叩いた女の子は、やっと私に素性を明かしてくれた。
「改めて、あたしは曽我部 桐子(そがべ とうこ)。で、この熊みたいな男が物部 達郎( ものべ たつろう)。あっちでカッちゃんと話してるのは、春日 武司(かすが たけし)。
あたしたち、高校の映画部からの付き合いなんだ」