身代わり王子にご用心





完成披露試写会は、疎らに席が埋まった程度だった。


私はそのまま受け付けを手伝ったのだけど、曽我部さんが大きなため息を着いたのが気になる。


「なにか心配事でもあるんですか?」

「いえ、ね……作品は完成出来たんだけど。このままじゃ上映出来る目処がたちそうにないのよ」

「えっ……」


映画事情には詳しくないけど、映画って完成したら公開が決まって上映されるイメージがあったから、彼女がどうして困っているのか判らない。


「私たちはいわゆる同好会みたいなものでね、今回製作したのもインディーズ·ムービーと言われる自主製作映画なの」

「そうなんですか?」


自主製作映画……となると趣味で、なのかな?


「そ。あたしは普段喫茶店でバイトしてるの。映画を撮るために、シフトに融通が利くのが条件だからね。知り合いのお店で働かせてもらってるんだ」


曽我部さんはサラッと話すけど、それだと映画を生活の中心に据えてるような印象を受けた。


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