身代わり王子にご用心
「他のみんなもそう。物部はガテン系のバイトしながら、春日先輩は在宅でIT系の仕事しながら、映画を作ってるの。後のメンバーも似たり寄ったり。
春日先輩なんて、製作費を稼ぐために投資でちょくちょく稼いでるみたいだし。
それでもこの映画を完成するのに、3年掛かったのよね」
……3年掛けて作った映画、か。彼らが桂木さんと同じ年なら、大学生の頃から作ってたってことになる。
きっと就活も諦め何もかもなげうって、この映画を作るために頑張ってきたんだろう。その情熱が、何だかまばゆく感じた。
「自主製作映画って、映画館では上映できないんですか?」
無知な自分を恥ずかしいと思いながら質問すると、彼女はそうなのよねえ、とため息を着く。
「低予算ではあるけど、あたしらにすればそれなりのクオリティに仕上げたつもり。どこぞの映画の会社の目に留まればって、招待状を送ったけど。現実はあの通り。マスコミも相手にされやしない……ま、無名のサークルが作った何の話題性もない作品なんて、ハナから相手にされないのも当たり前だろうけど。
チラホラ見える中でちょっとは作品に目を留めてくれる人がいればいいけど。現実はミニシアターか単館上映が精一杯かもしれないわね」