身代わり王子にご用心
ひんやりとした感触で、目が覚めた。
ぼんやりした頭のまま体を起こすと、保健室に似た部屋の中でベッドに寝かされてた。施設の救護室か何かだろうか。
「あれ……私?」
「あ、気づいた? よかった……気分はどう?」
そばに着いてくれたらしい曽我部さんが安堵したように息をつき、迷惑を掛けてしまったんだと直ぐ様謝った。
「気分は大丈夫です。……ごめんなさい、せっかくの上映会だったのに」
「いいの、いいの。今回はいわばお試しだったから。それより、上映中に気を失ったの覚えてる? 心配なら夜間もやってる病院に行った方がいいかもね」
冷えたスポーツドリンクを渡されて、ありがたくいただく。喉を潤して、そのまま首を横に振った。
「ありがとうございます……でも、本当に大丈夫ですから。別に映画に問題があった訳じゃなく、私自身の問題でしたし」
「それならよかったけど……あの場面で倒れたってことは、もしやフラッシュバックさせちゃった?」
曽我部さんは遠慮がちにオブラートにくるんだ言い方をしたけど、本当はこう言いたかったに違いない。
“もしやいじめに遭っていたのではないか”――と。