身代わり王子にご用心
食品売り場では藤沢さんが私の事を大袈裟に、「ご両親が亡くなった後、妹さんを育てるために10年間女手一つで頑張って来られたんですよ~」
なんて話すから、人のいいパートのおば様方には総じて「かわいそうに」と同情されてしまいました。
「水科さん、ほら。売り残りで悪いけど、惣菜好きなの持っていきな。店長にはナイショでね」
「切り落としの細切れだけど、お肉あげるよ」
「魚のあらもどうだい? 煮付けにすると美味しいよ」
なんだかこのところいただきものばかりで、日々荷物が増えてる。警備員さんもおば様達から話を聞いてるのか、「頑張ってな」と見逃してくれてるけど。
私、どれだけ貧しい人に思われたんでしょう?
もっとも、桂木さんが富士美さんのお店に連れて行ってくれたお陰で、髪型も変えたしメイクも多少はマシになったから。少しは普通に見られるようになったかな……と自分でも思う。
藤沢さんが「可愛くなりましたね!」と褒めてくれたし、彼女と一緒にお肌のスキンケアを勉強して、なるべく丁寧なお手入れを心がけるようになった。
(藤沢さんも既にお店に行ったことがあるらしい)
今まで手抜きしていた分大変だけど、目標がある分苦にはならなかった。