身代わり王子にご用心
お手入れを頑張れば頑張るほど、どれだけ自分がサボっていたかを痛感する。
“女性として綺麗になり、それを保つ”
たったそれだけのことがどれだけの時間とお金と努力が必要か、今更ながら思い知った。
今の今までそれを怠っておきながら、綺麗な人をただ羨んで僻み妬んで自分を否定して終わり……それじゃあ、誰にも見てもらえないのは当たり前。
生まれつきの顔の造りは変えられないけど、素肌を綺麗に整えメイクをすれば印象は変えられる。
(努力をしなきゃ……何も変わらないよね)
朝の洗顔を終えて、鏡に映った自分の素顔を眺める。
本格的にお手入れを初めてまだ1週間足らずだけど、毛穴のクレンジングを重点的にして引き締めてるからか、目立ちにくくなってきた。あごの弛みや小じわはすぐに消えないけど、無くす努力をしよう。
(……でも)
蛍光色の柔らかい光の中で、自分の瞳を見る。日本人に多いブラウン系統の色彩は、地味だけど気に入ってる。
それを見ていると思い出すのは、たった一人のひとの瞳だった。