身代わり王子にご用心




「こ、これ誰ですか?」


そう言っても可笑しくないほどの絶妙なメイク術には感嘆するしかない。


まるっきり顔が違う! まるで別人だ。


「あら、それはあなたのひとつの顔よ。言ったでしょう? 女性はいろんな顔があるんだって。それを出せる楽しさをあなたにも知って欲しかったのよね」


うふふふ、と富士美さんが気絶ものの美しい笑みを浮かべましたが。どこか黒い。


「ですよね~わたし、前から桃花さんのメイクをもったいないって思ってたんです。モテてた桜花のお姉ちゃんだから、素材は悪くないだろうって」


ふふふ、と藤沢さんまでが悪い笑みを浮かべてる。黒い妖精がそこにいました……。


「さぁ、さあ。これで胸を張ってパーティーに行くのよ! あなた達は女優になるの。
普段の自分を捨てて、演じてきなさい。
女は愛嬌と度胸よ!」


富士美さんにポンッと軽く胸を叩かれたけど、そういえば肝心な事を聞いてないと慌てた。


「あの……パーティーって。私、何も聞いてなかったんですけど」

「え~! 先週出かけた時に聞いたんじゃなかったんですか!? まったく……カッツーもいい加減なんだから」


藤沢さんが軽く頬を膨らませ、ようやく教えてくれた。


「今日は葛城(かつらぎ)グループの本社創立100周年記念パーティーですよ。イシカワロイヤルホテルで開催されます」

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