身代わり王子にご用心
「……で、でも。ご兄弟やご家族なのでしょう?わざわざこんなパーティーで演じなくても、話し合えばいいのでは?」
貧しくても妹とはお互いを思いあえた。そんな私の疑問に答えたのは桂木さんではなく、意外にも高宮さんだった。
「……暁は愛人の子どもだ。だから、本来なら葛城家の人間と認められていなかった」
「……!」
ショックな事実に言葉が出ないでいると、桂木さんが自虐的に笑う。
「葛城家当主の父には娘が一人いてね……高宮家と縁付いて生んだのが雅幸なんだ。だから、本来なら長女の息子である雅幸こそが、僕の今のポジションに相応しいんだよ」
「そんな……ことないでしょ!」
藤沢さんが桂木さんにニジリ寄り、顔を近づけ腰に手を当てて叱責する。
「大切なのは、あなたの意思でしょ! 嫌なら嫌って言えばいいじゃない。無関係だってきっぱり断って。
でも、やる気があるなら兄たちを蹴散らす気概を見せてやればいいでしょう」
「……そうできれば、ね」
勢い込んで話す藤沢さんに、桂木さんが寂しげに笑う。
「父が言うには、僕が生ませた子どもを長男の養子にして後継者に据えるそうだ。だから、僕はあくまで種馬みたいなもの。必要なのは身体に流れる葛城の血だけで、僕自身に用はない……けど、子どもの実父が何の地位もないのは恥だから、お情けでUスーパーの社長の地位は与えてくれるらしいよ。僕の意思には関係なく、ね」