身代わり王子にご用心
「そんなの、やっぱりオカシイ! 絶対おかしいし!! わたし……許せない!」
憤り過ぎた藤沢さんは、真っ赤な顔のままポタリと涙をこぼした。
「未来……」
そんな彼女を桂木さんはそっと抱き寄せ、藤沢さんは「バカ!」と泣きながら彼の胸を軽く叩いた。
綺麗な藤沢さんの涙に、きっと桂木さんも何かを感じたんだろう。彼女の髪を指で優しくすきながら、そこに軽くキスをしてる。優しげに見つめる瞳には暖かい感情があって。入り込めない2人だけの空気を感じて、何だか居たたまれなかった。
「後でメイク直しをしなきゃね~」
との富士美さんの呟きに納得しつつ、自分はどうすればいいんだろう? と考えてみる。
今日初めて葛城家の一員と公表される桂木さん。その親友の高宮さんのパートナー……ということは。
嫌にも応にも注目を集めるってことではないでしょうか?
……えええっ!?
(いやいや! それはない。うん、大丈夫。私が注目なんてされないから。きっとみんな高宮さんや他の美人に目が行くはず)
あり得ない。すべてがあり得ないけど、何よりもこの状況があり得ない。
リムジンから降りた途端に光り続けるまばゆいフラッシュに、意識をどこか遠くへ飛ばしたい衝動に駆られましたよ。