身代わり王子にご用心
「雅幸はこういった公の場に滅多に姿を現さなかったからさ。引っ張り出したのがどんな美人かと思って」
じろじろとこちらを値踏みするように眺め回す、無遠慮な視線。失礼だけど、それを咎める勇気は持てなかった。
「がっかりさせて申し訳ありませんが……これが私ですから」
半ば自棄になってそう答えると、派手な男性を咎める声が後ろから聞こえた。
「おい、富夫(とみお)。女性に対して失礼だろう」
「うるさいな、勝(まさる)。いつまでも兄貴ヅラして意見するな」
派手なひとは富夫で、後から来た人は勝と言うらしいけど。一体誰なんだろう? 高宮さんを呼び捨てにしてたけれど。
そんな私の疑問を察した勝さんは、私に身分を明かしてくれた。
「済まないね、コイツ酔ってるんだ。あ、僕は葛城 勝でコイツは葛城 富夫。僕たちは分家筋の人間で、暁とはまた従兄弟になるんだ」
また従兄弟ということは、祖父母が兄弟ってことか。桂木さんや高宮さんと同じ血縁だからか、どこか似てる。雰囲気は違うけど、鼻の形とか……やっぱり顔が普通より整っているところとか。
「ほら、富夫。お嬢さんが呆れてる、水を飲んでアルコールを薄めておけ」
「うるさ~い! 俺は酔ってない!!」
「酔ってないヤツほどそう言うんだよ。いい加減に自力で歩け!」
文句を言いあいながらも、富夫さんは勝さんに寄りかかり勝さんも世話を焼く。何だかほほえましくて、思わずクスッと笑ったんだけど。
なぜか、勝さんがこちらを見て固まってた。