身代わり王子にご用心
……あれ?
勝さんの顔が何だか赤い。
「あの……大丈夫ですか? 酔ってらっしゃるんでしたら、お世話を代わりましょうか?」
酔って身体を動かすと体調を崩す気がして声を掛ければ、勝さんはハッとした顔で慌てたように手を振った。
「い……いえ! 大丈夫です。私はアルコールは口にしてませんし」
「でも、お顔が赤くありませんか? もしかすると熱でも」
妹や藤沢さんと同じようなノリでついつい彼の額に指で触れようとして……我に返り慌てて手を引っ込めた。
「す、すいません! 私……勝手なことを」
「い……いえ」
勝さんはなぜか押し黙り、しばらくそのままで。その場から離れて良いのか解らかないままにいれば、つと彼が私に訊ねてくる。
「……あの、あなたは雅幸の恋人ですよね?」
「ち、違います!」
視界の端に見たくもない光景を入れたままの私は、思わずそう声を張り上げていた。
「た、高宮さんは……ちゃんと好きな方がいらっしゃいますから。私が恋人なんてあまりにもあり得なさすぎますよ」
「え、本当なんですか? でもなぜ、それならば雅幸はあんな目を……」
勝さんがおっしゃることは意味不明だけど、高宮さんのことをもっと聞きたいと思う私も相当救えないのだろう。
ぼんやりと考える私の耳に、勝さんの意味不明な呟きが届いた。
「……なら、僕にもチャンスはあるってことだよな」