身代わり王子にご用心
桂木さんの言う通りに一番近い交番から2人の警察官が来て下さったけど。説明をしているうちに倉庫で監禁された話をすると、壮年の警察官が眉間に皺を寄せて「その倉庫も見せてもらえますか?」と言うから、立ち合ってくれた店長の許可を得て案内した。
「閉じ込められたのはあなた一人ですか?」
「いいえ。もう一人いたんですけど……今日はたぶんもう帰ってしまったと思います」
「その方と連絡は取れるでしょうか? できたら警察署の方でお話を伺いたいのですが」
壮年の警察官にそう言われても、私は高宮さんの連絡先は知らない。チラリと桂木さんを見ると、彼は解ってるという風に手を振ってスーツのポケットからスマホを取り出した。
高宮さんのケータイにでも掛けているんだろう。彼がスマホを耳に当てて数秒もしないうちに、倉庫の中から単調な電子音が響いてくる。
「これ、雅幸の着信音だ」
桂木さんがスマホで呼び出していると、鳴り続ける単純なメロディ。まさか、と思わなくても中に何があるのか解る。
警察官に指示されて店長がマスターキーで倉庫を開けば。
そこにいたのは、大の字で眠り込んでいる高宮さんの姿だった。