身代わり王子にご用心



親族でもないのにこんな時間に警察署にまで付き添ってくれたみんなには、いくら感謝してもしきれない。


特に、店長は明日朝一での出勤なのに。頭を下げお礼を言った私に、店長は気にするなとおっしゃってくれた。


「そこまで深刻な状態だと気づかなかった私も悪い。もっと従業員一人一人に気を配るべきだったと反省しているよ」


そうおっしゃるけど。テナントを含めると、100人以上の働く人たちがいるんだ。そんな大勢の人たち一人一人をこと細かく観察なんて。フロアも分かれてるのに不可能に近いと思う。

店長には休んだ時やいろんな面で助けて頂いて。今も明日は休みなさいと気遣ってくださる。ありがたくて涙が出そう。


「すいません……でも、明日は出勤します。棚卸しがもうすぐですから、これくらいで休んでられませんし。相手の思うつぼになりたくないんです」

「……そうか」


熊田店長はしばらく考え込むと、うんと一人頷いて私にこう話す。


「明日はテナントも含めた全体朝礼をしよう。そこには水科さんも一緒にいてもらうが、被害者は君であることを伏せて被害届を出した事実を公表しようと思う。警察の捜査が始まると捜査関係者も出入りもするだろうし。動揺させないためにも、きちんと知らせておこう」


もちろん実行者にプレッシャーを与えるためにも、と店長は話して帰って行った。


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