身代わり王子にご用心
「藤沢さんも、桂木さんも、高宮さんも。私のために本当にありがとう……」
マンションに着いた私はすぐに3人にお礼を言った。
もはや日付が変わった時間帯、同居人とはいえここまで付き合ってくれた嬉しさと、付き合わせた申し訳なさでいっぱいで。お礼に、と夜食を作ることを提案すると。藤沢さんが私もと手を挙げた。
「桃花さんは被害に遭ったばかりですから、わたしに任せてくださいよ」
「それならたまには僕も手伝おうかな。未来に任せっきりじゃ不安だから」
腕捲りをし張り切る藤沢さんに、桂木さんが茶々を入れると彼女がむう、と膨れた。
「不安って何ですか! 失礼しちゃう。目玉焼きも焼けないカッツーに言われたくありませ~ん」
「こら、ばらすなよ」
コツン、と拳で殴るふりをする桂木さんに、藤沢さんは頭を抱えてふふふと笑った。
「カッツー、火が怖いもんね~あらやだ! ここってクッキングヒーターで火なんか出ないのに。お料理を全部ハウスキーパーや高宮さんに任せてたのは、ただのサボりで~す」
「言ったな~!」
以下、まるっきりバカップルのやり取りを聞かされ続けた私の精神的疲労度はお察し下され。
ガリガリ削られた精神的なナニか……なんか警察に行くより何倍も疲れたのは、気のせいじゃなかったはずですよ。