身代わり王子にご用心



「なるほど……お話はわかりました。警察署で詳しいお話をお聞かせ願えますか? 水科さん……」


大隅刑事が私に向かってそう言うのを、大谷さんは唇の端を上げて見てたけど。


「……と、大谷さん」


大隅刑事がそう続けると、大谷さんはふふっと微笑む。


「ああ、わたくしが証言すればいいんですのね。わかりました……今支度をして」

「いいえ、容疑者としてです」


大隅刑事がそう断言すると、彼女はカッと目を見開いて私を指さした。


「何をおっしゃるんですか!? 犯人はこの人でしょう! 今だって現行犯で、浅井さんの財布を盗んだじゃないですか! それがなぜわたしの仕業になるんですか!!」

「なら、今から指紋を採取させていただきます。もちろん水科さんのもですが。犯人でないと言うなら、ご同意頂けますわよね?」

「あ、当たり前じゃない! 私は犯罪者じゃないんだから、何一つ疚しいことなんて……」


威勢がいいことを言いつつ、明らかに大谷さんの勢いが弱くなっていった。


「会議室をお借りします。それから、ロッカールームには許可した人以外は入れないようにしてください」


いつの間にか呼んだのか、女性警察官がロッカーの封鎖をして出入口を押さえる。必要なものは彼女が代わりに取りに行く、というふうに決めて。ロッカールームを後にした。



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