身代わり王子にご用心
「は? あんた何おかしいこと言ってんの? あたま大丈夫? いつわたしがあんたを脅したって言うのよ。証拠は?」
「そ……それは」
「ないでしょう! ほら、ばっかみたい! どいつもこいつも被害妄想ばっかり。
いい? この人は勝手に水科さんを犯人にして陥れようとした自作自演じゃない。
なら、捕まるならこの女でしょう……」
大谷さんが話してる最中、いきなり会議室の照明が落とされた。そして、スクリーンが落ちたかと思うと。いつの間にか用意されたプロジェクターから映像が映し出される。
それは、私のロッカーから見た映像と音声の全てだった。
『ほら、あんたの財布を寄越しなさいよ。あの女を犯人にしてやるんだから』
『で……でも。何もこんなことをしなくても……』
『は? 何今さらビビってんの。言っとくけど、あんたも共犯なんだからね。警察にバラしたら、店どころかこの町にもいさせなくしてやるから。あたしの父さんは議員やってるんだから、あんたの家族を潰すなんて訳もないんだよ』
……大隅刑事からアドバイスされた証拠集め。携帯電話のムービー機能を使った録画映像が、いきなり証拠となるとは思わなかった。
『あの女ムカつくんだよ。あたしの王子様にガキの頃から媚を売りやがって! 気に入らなくって、ガキの頃にちょいと苛めてやったらさ、あんたみたいにびくついた根暗になってやがんの! それでもまだ図々しく生きてやがるから、徹底的に潰してやる。これで自殺でもしてくれりゃ万々歳なんだけどな~アハハハ!』
「……さて、大谷さん。どういうことか署でお話をお聞かせ願えますかな?」
ヒゲのおじさん……阿倍野警部は、この上ない凄みのある笑顔で大谷さんにそう言った。