身代わり王子にご用心
警察署から一緒に帰ると粘る桂木さんを、まだ用事があるからと何とか先に帰した。
「……さて、と」
警察署の正面玄関から出ると、曇り空から今にも雪が落ちてきそう。真冬の今は6時を過ぎると真っ暗で、街灯を頼りに歩き出す。
警察署の前は割と大きなバイパスが通ってるけど、バスを使うのはもったいない。今晩の宿を早く決めなきゃいけないけど、当てはないなあ。
(たしかここから駅前まで歩けばビジネスホテルがあったっけ)
バイパスと交差する駅前通りをてくてくと歩き出すと、顔に冷たさを感じる。
顔を上げれば、ふわふわと白い雪が鈍色の空から次々と生まれては落ちてくる。
気まぐれな風が強く吹いては、耳がちぎれそうな冷たさをもたらした。
「う……寒」
コートの衿を立ててそこに顔を埋め、顔をしかめながら歩くけど。どうにも身体が冷えて仕方ない。
あまりに体を冷やしてしまうと、まだ本調子じゃない体調が悪くなってしまうかも。
どうにかして暖を取れる場所を……と周りを探して、有名なショッピングモールを見つけた。
(そういえば、ここには書店とかあったっけ)
調べたいこともあった私は、急いで信号を渡りショッピングモールへ向かう。途中で電力会社の林を横に奥へ行くと、寒い中警備員さんが交通整理をしてる。
南口から店内に入ると暖房が効いていて、ホッとしながら目的の店に一直線に向かった。