身代わり王子にご用心
カイ王子、と一瞬思ってしまった。
だけど……。
違う。
顎の形とか、微妙な眉の濃さとか、唇の薄さとか……。
首から肩のラインも、あまり表情を動かさないところも。
耳の形だって、違う。
仕草に少々品がなくて乱暴に見えるところも。
「たか……みや……さん?」
私が、どうして? という疑問を込めて呼びかければ、バスローブを身に付けた彼は。ホテルのバスタオルを肩に掛けたまま私を見る。
今の彼はカラコンがなく、ブルーグレイの宝石のような瞳がこちらへ向けられる。
その色は、作り物では決して出せない絶妙な美しさで。
雪の中――サンルームに咲き誇る極彩色の花の中で輝いていた、一粒の、宝石。
ああ、と私ははっきり理解した。
――高宮さんこそが、あの時のちっちゃな王子様だったんだ……って。