身代わり王子にご用心
「どうして……?」
私が二度目の疑問を発すれば、高宮さんは私を見たままゆっくり口を開く。
「……アンタも気づいた通りに、これがオレの本当の姿だ」
「染めて……たの?」
「ああ」
彼は短い返事を返した後、何も訊かずに私の目の前に立つ。彼の顎から水滴が落ちて、ポタリと床に落ちた。
銀色……というよりは、シルバーブロンドと呼んだ方がいいかもしれない。 見事な艶のある髪は、やはり高宮さんらしく少し癖がある。
彼は私の許可も得ず、私の横たわっていたベッドの端に腰を下ろす。少し沈み込んだマットレスの反発に、身体がビクッと揺れた。
がしがしと乱雑に頭を拭く動作が耐えられなくて、彼の手からバスタオルを奪う。
「そ、そんなに乱暴にやると髪が痛んじゃう。わ、私にやらせて」
普段ならこんな大胆な行動は取らないけど、昔からの知り合いだったという事実に多少の気安さを感じてしまっていた。
「……勝手にしろ」
高宮さんは拒絶するでなし、私のわがままを自然に受け入れてくれる。
膝を使って彼のそばまでにじり寄ると、両手で持ったバスタオルで彼の髪を丁寧に拭ってく。
後ろ姿しか見えないから、彼がどんな表情をしているかはわからない。
トントン、と軽く叩きながら髪の水分を取っていると。ふいに高宮さんが口を開いた。
「……妹にも、こうしてやってたのか?」