身代わり王子にご用心
本当に、食べられるかと思った。何度も何度も角度を変えて、その度に深くなるキス。
抵抗しようと彼の胸に両手を当てていたけど、キスを繰り返されているうちに身体が震えて力が入らなくなっていく。
……なぜ?
どうして高宮さんが、軽蔑する私にキスをするの?
マリアさんが……好きなくせに。
(でも……彼女は)
ひどく残酷な現実を思い出すと、自然と涙が溢れてきた。
「……嫌いなんでしょ? 私を嘘つきって……言ってたくせに。どうして」
高宮さんはしばらく私をじっと見ていたけど、おもむろに動いて私の顎の下に頭をやる。
「……痛ッ」
ズキン、と首筋に鋭い痛みが走る。
噛まれた……
そう気づくのに、時間は掛からなかった。
「そうだな、アンタは嘘つきだ」
私を嘲笑う高宮さんは、シュルッと自らのバスローブをはだけた。
「どこまでも嘘つきだ、アンタは。自分にさえ、嘘をついてる」