身代わり王子にご用心
とける
「素直に、なれよ」
高宮さんは何度も、何度も、繰り返し私に囁く。
素直にって、なに?
私は高宮さんに、嘘なんてついてない。
なのに、どうして……!
「嘘なんて……ふ、ぁ!」
苦しさを感じて頭を振る。ぽろぽろと出る涙は、彼の唇で吸われていった。
「言っただろう? アンタは自分にも嘘をついてる――と」
どういう、意味?
高宮さんの言ってる意味がさっぱり解らなくて、私はさらに首を横に振った。
「妹に、アンタは何を感じた?」
「おう……かの?」
「そう、アンタが親代わりになって育てた妹。唯一の家族できょうだい……姉思いのいい妹」
熱で白濁とした頭の中で、妹のことを考える。
12で両親が亡くなってから、桜花は常にいい子だった。わがままをほとんど言わずに、勉強を頑張って家事も手伝ってくれて。高校と短大は自分で推薦枠を取り、奨学金でほとんど学費がかからないようにした上に、本来なら禁止のバイトをして家計を助けてくれた。
そんないい妹はなかなか居ない。もともと聞き分けのいい子だったけど、両親が他界してからはますますしっかりして。逆に私が叱られるほど。
保護者会なんかではしっかりして頼りがいがあるいい生徒ですよ、といつも言われてた。
そんな妹が自慢で、誇らしかった。