身代わり王子にご用心
桜花が帰ってきた時、送ってきたのは幼なじみの健太朗くんで。2人が上手くいったのは火を見るより明らか。
幾つもの紙袋に入るプレゼントを手にした桜花は、頬を薔薇色にして全てを報告してくれた。
“すっごく楽しかった!みんながいろんな隠し芸をやってくれたりしてね。その中で……健太朗くんが……わたしに告白してくれたの。クラスのみんなにからかわれてすごく恥ずかしかったけど、でも。嬉しかった”
嬉々として話す桜花は、生き生きと輝いてた。数ヶ月前の私の誕生日は、桜花がお小遣いでショートケーキを買ってくれて。2人でひっそりとお祝いをした。
……わかってる。
桜花は彼女なりに努力して、こうして祝われているんだって。
……でも。
でも。
私は……。
あの時、私には消せない楔が打ち込まれた。
――5つ下の妹には何もかも敵わないどころか、劣っているのだと。
それでも、私にはまだ“働いている”という矜持があった。
“私は桜花の姉で、保護者で、親代わりなんだ”――と。
そんな立場を振りかざして、責任という言葉で全てを封じ込めた。劣等感や敗北感や嫉妬等という負の感情を塗り込め、蓋をして見ないようにしてきた。
認めてしまえば、自分を支える何かが壊れて足元から崩れ落ちてしまうのが判ってたから。
そうしてごまかし誤魔化しきた十年。
桜花が完全に離れた今……自分に何が残されたのか。
何も、ない。
偽りの自分を積み上げてきた私には、手元に残るようなものは何一つ残ってなかったんだ。