身代わり王子にご用心
「……っ」
ひっ、と喉がひきつれる。
今まで蓋をしてきた劣等感や嫉妬という醜い感情が。長年塗り込めてきたはずの蓋を破り、溢れてきそうだった。
「……わたし、はっ……」
震える両手で顔を覆い、唇を戦慄かせながら嗚咽を漏らす。
「桜花が……羨ましかった……」
「……ああ」
高宮さんが、短い相づちを打つ。否定も肯定もせず、ただ聞いてくれる相手がいる。それだけなのに、私の口からは信じられない勢いで言葉がほとばしった。
「桜花が、妬ましかった……いつもいつもいい子で……みんなの期待を得て、期待にしっかり応えて結果を出して。みんなの信頼と称賛を得られる。……親にだって可愛がられて……認められて」
グッ、と顔の上に載せた両手で拳を作る。
「いなくなれ……って、思った」
ボロッ、と大粒の涙が頬を伝う。
「こんな妹……いらない、嫌いだって思った。たぶん……生まれた時から。すごく可愛かった妹は、みんなに無条件で可愛がられて。私には……5つも上でしょ、がまんするのが当たり前で……ちょっとわがまま言うと叱られた。“お姉ちゃんなんだから”って。
大嫌いって……思った。
桜花なんていなくなれって。
だけど……」
ヒクッ、と喉が鳴る。
「いちばん嫌いなのは……じぶん、だった」