身代わり王子にご用心




蓋が砕けた、瞬間だった。


「……自分が嫌い……大嫌い! 何をしたって上手くできなくて、人付き合いが下手で。人に誇れるものなんて、何一つない空っぽな人間。
桜花のお姉ちゃんって期待されて……その度に失望されるのが怖かった。
わ、私は何一つできなくて……何も持ってない。だから……桜花にも申し訳なくて。
誕生日だって……お祝いしてくれるって、桜花が私を優先してくれたのは嬉しかったけど。
きっと私は、上手い事が言えずに……空気を白けらせちゃう。せっかくの妹の記念日なのに……絶対に失敗して最悪な気分にさせるから……だから」

「……」


高宮さんは身体を覆うのをやめると、私の腰を抱えて上半身を起こされた。


きっと、涙でぐちゃぐちゃになっているであろう恥ずかしさから、そのまま俯こうとしたけど。彼は私の顎を掴んでそれを許さない。


「目を、逸らすな」


傲慢な命令をする高宮さんは、それに慣れた空気を纏っていて。私は自然と従っていた。


何センチか離れた淡い瞳に見入っていると、彼の唇からとんでもない命令が下される。


「自分から、キスをしてみろ」

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