身代わり王子にご用心
決意をするのに、何分かかったんだろう。
それから行動に移そうとしてもじもじして。
さらにそこから彼に手を伸ばすまで、たぶん30分はかかったと思う。
でも、高宮さんは怒ることもせずじっと待っていてくれた。
貧相な身体を晒したままなのも恥ずかしくて、彼のバスローブを軽く羽織ったけど。何も言われない。
ホッとして震える手で、彼の頬に指先で触れた。
夜だからか、少しだけヒゲの感触がある。顎をそっとなぞると、彼の頬を両手で包む。
呼吸と鼓動が、おかしくなりそう。
膝立ちの姿勢で彼の顔に自分の唇を近づける。緊張から微かに震えて、躊躇いながら彼の唇を見据える。
以前、そこに自分から触れたと思い出すと。カッと身体が熱くなる。
深呼吸をしてから、急き立てられるようにそっと唇を重ねた。
少しだけ、冷たい。
軽く、触れただけ。
それでも死にそうなほどに恥ずかしくて、すぐに唇を離した。どくどくと心臓が五月蝿い。
「……もう一度」
高宮さんの傲慢な命令はまだ続き、私は躊躇いながら再び唇を重ねる。二度、三度。
躊躇いをかなぐり捨て、私から少しだけ深いキスをする。すると、彼の瞳に剣呑な光が宿った。
「……アンタの方から、誘った」
高宮さんはそう嘯くと、両手で私の顔を掴んでキスをぶつけてきた。