身代わり王子にご用心
第四章 会えない日々
意外なひと言
「新作のBlu-ray借りてきたから観ようよ!」
バタン、と派手な音を立ててドアが開いた途端、パッと桂木さんが離れていった。彼が軽く睨み付けた先にいたのは、ブラウンの瞳に黒髪を持つ、どこかで見たような人。
その人はおかしな空気にも構わず、液晶テレビを置くラックにあるBlu-rayレコーダーにディスクを入れる。
そして映像が自動再生されると、私と桂木さんをソファに座るように促した。
「これ、舌を噛みそうな映画の賞を取ったらしいよ。楽しみだな~」
なんか一方的にペラペラ喋る人に違和感。コンビニの袋をテーブルに置いて、ジュースやお菓子を出すし。すっかり鑑賞会をする気満々だ。
呆然と私が目を瞬いていると、彼はニッと笑ってこちらを見た。
「あんた誰? って顔してる。桃花ってば、わかりやすいな」
「えっ……と」
見たことがあるような、ないような。何とも微妙な人に名前呼びされるのは複雑な気持ち。
「さて、問題です。カイ王子が本物に戻った。なら、ここにいる僕は誰でしょう?」
謎の人がなぞなぞを出すって洒落にならない。
けど、確かに高宮さんはもとの身分である王子に戻った。高宮の身代わり、とアルベルトさんも言ってたし。
はて、それなら私がお店で会ったカイ王子(仮)は……偽物だったってことになる。妙に明るかった印象は……なんか目の前にいる人と被る。
なら……本物のカイ王子が務めた高宮 雅幸の本人は。
「あなたが……本当の高宮さんなんですか?」
「当たり~!」
本当の高宮さんは、えらく愛想がいいフレンドリーな方でした。