身代わり王子にご用心






「僕は現国王の王妹を祖母に持って、叔母の弥生はエルマー王子の妃になってカイを産んだ。11年前の僕はホントガキだったからね。 なんで従兄弟なのに僕には継承権がないんだ! って。大叔父にあたる国王陛下に訴えたんだ。
そしたら、国王陛下はこうおっしゃったんだ。
“ならば、カイになれ。数年猶予を与える。その間に現在のカイ本人以上の素質を見せよ”ってね」


高宮さんはペットボトルのミルクティーを飲むと、ふうと息を吐いた。


「もちろん、こんなふざけたことが本当に行われるとは思ってなかったけど。
カイの父上であるエルマー王子が謎の死を遂げて、唯一直系の血を引くカイの身に危険が迫っていたという切迫した事情があったからね。本気であられたらしい。
1年……その間王子としての教育を施され、カイになる準備をしたんだ。
もちろん、国民を欺くというのに良心は痛んだけど。僕がカイ以上に有能なら問題ない、いずれ国民にとって有益になるなら……と考えた」


だけど、とペットボトルをテーブルを置いて高宮さんは沈んだ顔をする。


「結局、僕は何一つカイに勝てなかった。たった12才の子どもだったカイのレベルに。
……当然だな。カイは11から閣議への参加を認められる才能があったんだ。
所詮凡人だった僕には、カイに敵うはずがなかったのに。意地になって残りをカイとして過ごして、結局自分を追い詰めただけさ。
だから、カイが居るべき場所はやはりヴァルヌスなんだよ。
住むべき世界が最初から違ったんだ」



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