身代わり王子にご用心



……従兄弟とはいえ、優れた相手に嫉妬をしてしまう。なんとなく私には解るような気がした。


私も5つ下の妹を、いつも妬んでた。桜花になりたい……って、何度願ったか。


「カイには……最初から敵わなかった、それは解ってたのにつまらないプライドのせいで、認めたくなかったんだ。
僕が悪戯したのにカイが庇って名乗るから、代わりに彼が怒られたり。身代わりだって、国王陛下を説得したのがカイだったんだ。
“雅幸が優秀なら僕は喜んでこの立場を譲ります”……ってね」


高宮さんはペリペリとワッフルの袋を開き、カブリとそれにかぶりつく。クリームのついた口を拭いながら、やっぱりと呟く。


「もちろん、彼はいい加減な考えで言ったんじゃない。
カイはいつだってヴァルヌスのことを考えて、民と国のためになることばかりしてきた。たくさん努力して、実力で王位継承権1位と周囲を認めさせた。
それなのに……カイの作った“孔雀のはね”で飾りたてたところで、所詮カラスはカラス。
虚栄を張りながら、本当の自分を偽るのがどれだけ息苦しかったか。
結局、僕は逃げてただけさ。本当の自分を認めたくなくて。
けど、もういい。10年も掛けて自分がどれだけ馬鹿か解った。
自分は子ども用の玩具を作るのが好きな、ちょっと内気なマニアがお似合いなんだって。
やっぱり、無理に背伸びしてもいいことなんてないね。
自分を偽るんでなく、本来の自分を晒して受け入れてもらえる。それがどれだけ心地いいか、幸せか。ようやく解ったんだ」


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