身代わり王子にご用心






だから、なんだ。


高宮さんでいたカイ王子がずっと玩具売り場にいたのは。


わざとダサくして人と関わらないようにしたり、髪を染めた変装をしてたのも。本物の高宮さんが戻った時に困らないように、との配慮だったんだ。


今の高宮さんがカイ王子を偽ってたときも、カラーコンタクトとカラーリングを使ってたに違いない。


でも、納得できない点もある。


それは、安全性について。


仮にも王位継承権1位の王子を、いくら世界的に見て安全な部類に入る国にいかせるといっても。やっぱり危険が全くないとは言い切れない。


その事を高宮さんに問いかければ、彼はああ、と教えてくれた。


「実はこのマンションはもともと葛城が建てたもので、暁の部屋があったし、ヴァルヌスの王族にもそれぞれ部屋があったんだよね。今回は警備上の理由でまとめて住んでもらってたけど」

「えっ?」

「こんな重大事で安全対策を疎かにする訳にはいかないだろ?密かにだけど、警察庁のセキュリティもあったし。ボディーガードだってそれとなくついてたよ。もちろん、素人にはわからないようにしてたけど。
だから、カイもやたらに外出はしてなかったはずだよ。外出する前に警備計画を立てる必要があったから」


確かに。ここ2ヶ月近い同居生活の中で、高宮さんが外出したのは数えるほどしかなくて。大抵は家にいた。


それが、安全性のためだったなんて。


それから、と高宮さんは付け加える。


「あと、これは君だから教えとくけれど、カイはマジに貴族に命を狙われる危険があったんだ。父上であるエルマー王子のお命を奪ったタヌキにね。そのために一時亡命みたいな形で日本で匿ってもらってた。その間にヴァルスで安全を確保するためにね。僕は偽物とバレてたから手を出されなかったけれど、カイはあのまま王宮にいたら確実に殺されてただろう――これが本当で最大の理由さ」


その理由を聞いて今までの対応に納得がいった。


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