身代わり王子にご用心



そう説明してくれたのは高宮さんで、彼はソファの上で正座をしてずず~っと紅茶をすすってる。


というか……ソファで正座って。


「カイ王子からもお話が?」


いったいどんな説明があったんだ、と戦々恐々としていると。高宮さんがぷはッと息を吐いて言葉を付け足す。


「ん。どうしても必要な勉強のために、ってさ」


勉強って……


確かに、ドイツ語やヴァルヌスについて勉強はしたけど。ベッドの上で悪戯ばかりされたから、覚えるどころじゃなかったのに。


かあっと頬が熱くなって、急いで紅茶を飲むふりをする。そんな私の耳に、桂木さんの低い呟きが入った。


「……いったいどんな“勉強”をさせたんだか」


不機嫌さ丸出しのそれに、彼の様子が気になって横目で見遣ると、桂木さんは誰にも目を向けずに黙々と紅茶を飲んでた。


「そうそう」


カタン、とティーカップをソーサーに置いた高宮さんが、私に現状を教えてくれる。


「僕は明日から高宮 雅幸として働くよ。幸いカイが玩具売り場担当になってくれてたし。
ちなみに、桃花をいじめてたオバサン、全然罪を認めないみたいね。犯人だって証拠はバッチリ揃ってんのに、まだ桃花が犯人って主張してて。すっごいふてぶてしい態度を崩さないってさ。当然会社もクビになったよ」


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