身代わり王子にご用心




「まったく……あなたは優しすぎる」


流石に桂木さんも、呆れたというようなため息をつく。


「もしも子どもが親の犯罪で肩身の狭い思いをしたとしても、どうしようもないでしょう。そんな親を持った不幸からは逃れられないんです。
どれだけ望もうが、どんな親でも親と言う事実は消せない」


話しているうちに、桂木さんはどこか沈んでいるように見えた。


そういえば、と思い出す。


桂木さんは愛人の息子だから、葛城には正式な子どもと認められなくて。跡継ぎを得るための結婚を強要されそうなんだ……って。


冗談めいて話してたけど、あれはたぶん本当の話だろうな。すごく苦しそうに見えたから。


(桂木さんも親に人生を狂わされた一人なんだ……)


子は親を選べない、というけど。どうして親になったのに子どもの事を真剣に考えない人がいるんだろう。


自分のわがままや感情や事情を優先して、義務や責任を放棄し子どもをないがしろにする。そんな人たちでも親だから、大切にしろ敬えと言えるのかな?


わがまま好き放題にした方が得と言うなら、正直私だってそうしたい気持ちはある。仕事に行きたくない日もあるし、桜花の世話が嫌になった時も。


だけど、私が働かなきゃ他の人にしわ寄せがあると理解してるし。桜花が困ると解ってたから。蔑ろにはできなかった。


親になったのに好き放題に生きる人たちは、そういった想像力がないんだろうか? とも思う。

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