身代わり王子にご用心



「子どものことはまあ、ぼくらにはどうもできないよ」


ソファに正座をしたままの高宮さんは、シュークリームを口にしながら甘くないことを言う。


「結局、子どもの監督や養育は親しかできないんだ。虐待があるとか、の緊急性や事件性がない限り公的に介入もできないんじゃないかな」


それは確かにそうなんだけど……。


本物の高宮さんは子どもの事が好きじゃないの? って思うほど冷めた言葉だ。


「高宮さんは、子どもがあまり好きでないんですか?」

「ん~? そうでもないよ」


バナナオムレットのパッケージを破り、高宮さんは現れたお菓子にパクリとかぶりつく。


「ぼく自身が精神年齢低い子どもだからさ、本物の子どもとはウマが合うんだよ」

「マサユキったら、ヴァルヌスで子ども達に大人気だったのよ」


今まで口を挟まなかったマリアさんが、クスクスと笑いながらカイ王子の身代わりをした時のエピソードを披露する。


「去年のクリスマス、最後だからってサンタの格好で町を回ったんだけど。ちょうど雪が降ってきて。ホワイトクリスマスだ! ってあちこちで雪だるまを作り出したの。
しまいには子ども達と雪合戦。しかもいい年なのに、ムキになって三歳児に勝とうとしてたんだから呆れちゃう」

「ちょ、マリア! ばらすなよ~」


焦ったのか高宮さんが投げた抗議のエクレアは、マリアさんの手で開けられて彼の手に戻る。


「いいじゃない。自分は王族だからって空威張りするよりよほど有意義な時間の使い方だと思うわ」


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