身代わり王子にご用心



「そうだけど、さ……」


ぶつぶつ言いながらも、高宮さんはプリンに手を伸ばす。いったいいくつ目のデザートなんだろう?


拗ねたような高宮さんを、マリアさんは微笑み見ている。母親のような眼差しだけど、2人は恋人じゃないの? なんて疑問から彼女をチラチラ見ていると、マリアさんは高宮さんの元からアップルパイを奪って私と桂木さんにくれる。


「マサユキ、いい加減独り占めするのはやめなさい。ホントに子どもなんだから」

「いや……別にお菓子が……って訳じゃ」


そんなに物欲しそうに見えたのか、と軽いショックを受けていると。高宮さんがドーナッツを頬張りながら、唐突に話を変えた。


「そうそう。今度、葛城の新製品で簡単なアニメが作れる玩具が出るんだ。暁はどう? モニターで作ってみる気ない?」

「アニメなら僕より、カイの方が喜んだだろうな」


今さらだけど、と微苦笑する桂木さん。カイ王子がアニメ? と首を捻ると、高宮さんが教えてくれる。


「カイはもともと、クレイ·アニメーションに興味があったみたいなんだ。ヴァルヌスにも幾つか作品があったけど」

「高校の映画部でも何本か短編を撮ってたよ」


桂木さんの言葉に、高宮さんが目を輝かせた。


「それ、いいな! カイのクレイ·アニメーションなら、プロと遜色ない出来だろうね」


高校の映画部……


曽我部さん達のことが自然と思い出され、無意識に意外な言葉が出てた。


「その商品のプロモーションに、カイ王子の短編映画が使えないでしょうか?」



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