身代わり王子にご用心
なんて大それたことを言ったんだろう、と自分でも思う。
自分をいじめてた相手の娘を一時的とはいえ預かるなんて……
しかも、偉そうに言ったものの。私は葛城のマンションに居候の身。それが更に子どもを預かるなんて、どれだけ図々しいか。
厚顔無恥と揶揄されてもおかしくないのに、マンションの持ち主でもある桂木さんはあっさりと許可をくれた。
「緊急性が高いと判断したなら仕方ないでしょう。幸い世話できる人間は多いですから」
「そ~だね! ボクもお人形で一緒に遊んであげるよ」
高宮さんがピラピラとカラフルな紙を振りながら言うけど。
「やめろ、オタクにしか見えないおまえが子どもと遊ぼうとすると、危ない人間にしか見えない」
「え~なんでさ! ボクは純粋な気持ちで遊んであげるだけだよ」
ぷう、と事務所の一角で膨れる高宮さん。可愛い……とは言い難かった。
「あ、そうそう。はいこれ」
高宮さんが私に数枚の紙を渡してくるから思わず受けとると、それは上映会のチケット。日付は2月の一番終わりの日曜日だった。
「店長と曽我部さん達に相談したら、とんとん拍子に決まったんだ。二階の催事場にテントを張って入れ替えで上映会! 当日は曽我部さん達も手伝ってくれるってさ。その条件として、子どもでも観れる短編ひとつを一緒に上映することになったけど」
そうそう、と高宮さんはポンと手を叩いた。
「最後の時間には、カイも来るみたいだよ~やっぱり帰国前に懐かしい顔を見たいんだろうね」