身代わり王子にご用心
(カイ王子が……スーパーにやって来る。最後に会えるんだ)
「あの……大丈夫ですか?」
聞き慣れない女性の声に、ハッと我に返り恥ずかしさから頬が熱くなる。
ゾウを模した送迎バスから顔を出してるのは、お母さんにそっくりの幼稚園の先生。名札に『さかがみ』と書いてあるから、娘の萌絵さんに間違いないだろう。
「あ、すいません。朱里(じゅり)ちゃんのお迎えに来ました」
「はい、母から聞いてます。よろしくお願いしますね」
本当なら坂上さんも一緒に来る予定だったけど、仕事が立て込んでしまってて無理だった。 だから、足として桂木さんが自分の車を使って送ってきてくれた。
というか。
萌絵さんは小学校の時に一年間だけ私と同じ登下校の班だったとかで、それだから信頼してくれるらしい。
見知らぬ人だったら、たとえ母からの頼みでも子どもを託さないとはっきり言われた。
(子どもの時の縁って、どこで繋がってるかわからないなあ)
「それじゃあ、朱里ちゃんバイバイ。水科さんの言うことをよく聞いて、いい子にしててね」
幼稚園のバスが去ると、子ども達は三々五々親と帰る。私たちをじろじろと見てヒソヒソ話をする人もいたけど、一時的なものだし構わない。
私は、朱里ちゃんの視線に合わせるべく膝を折って目を合わせた。
「こんにちは、朱里ちゃん。私は水科 桃花。で、こちらが桂木さん。しばらく朱里ちゃんのお世話をさせてもらうの。よろしくね」