身代わり王子にご用心
マリアさんがスマホで呼んだ車は、運転手とボディーガード付きのロールスロイス。これまた慣れない高級車に身を縮めながら、少し離れたショッピングモールに向かう。
桂木さんのリムジンもびっくりしたけど。ロールスロイスは更に驚き。手磨きであろうウッドパネルの上質さや、車内に張られた質の高い布地(名前がわからない)も、一目で高級品とわかる。
やっぱりマリアさんは相当ないい家のお嬢様なんだな……と引け目を感じた。
朱里ちゃんは車に興奮して、ずいぶんとはしゃいでたけど。
私が勤めるスーパーにも食品はあるし、子ども服の取り扱いはあるけど。もとフロア長に見つかったら、朱里ちゃんがどんなめに遭うかわからない。だから、マリアさんの配慮には素直に感謝した。
地下駐車場に着いて運転手にドアを開けてもらい降りるけど、こういう扱いに慣れない庶民だから、どうにも居心地が悪い。
「先にジュリアの服を見ましょうか」
とマリアさんが言うから、てっきり子ども服売り場に行くかと思ったけど。
着いた先は、ブランドものを取り扱う高級ブティック。そして、朱里ちゃんにクロエとかいうブランドのチュニックを試着させてた。
薄いベージュ地に黄色い花のようなデザインで、下には膝までの丈の白いズボン。
朱里ちゃんには似合うけど、どんなお値段……と見たら。
2点合計で5万円也。中に着るシャツも含めたら、7万ですか……。
格安チェーン店の一着980円に慣れた身からすれば、もはや別世界ですって。