身代わり王子にご用心
「それで、今日藤沢さんを呼んだのは他でもなくて。あるお願いをしたいからなんだ」
桂木さんがそう切り出したのは、レアチーズを完食した頃で。おつまみもすっかり消えていた。
高宮さんに止められた私と違って、藤沢さんはどんどん色んなワインを飲んでいて。常に笑いっぱなしに。
「あははは! なんですか~? あたしで出来ることだったら~どんどん言っちゃって! ほらほら、前置きなんてすっ飛ばしちゃって~」
シャンパングラス片手に手をパタパタとする彼女は、たぶん私以上に無敵状態に違いない。
「それじゃあ単刀直入に言わせてもらうと、僕の偽の恋人役を引き受けて欲しいんだ。親が勝手に決めた婚約者がしつこくて、諦めさせるためだから。このマンションで同居って条件もつくけど。成功したあかつきには、僕が出来ることならなんでも叶えるし。礼金も用意しておくよ」