身代わり王子にご用心
「ま~ったく、健太朗くんってばお堅いんだから」
ふうっ、とため息を着いた藤沢さんは、でもまあ……とまたにやける。
「入籍まであと1週間でしょ?やっぱりドキドキする?」
「う~ん……特にはしないけど」
なぜか桜花が健太朗くんをチラッと見ると、見る間に彼の顔が赤くなった。
「今日のお昼の時に、ちょっと報告したいことがあるの」
「へえ、何だろう?」
改まって桜花が話をしたい、というなら大切なことだろうな。なんてのんびり考えていたんだけど。
「それはそうと……」
ガシッと桜花の手が私の腕を掴み、キラリとその目が光る。しまった……と思ったところでもう遅い。
「お姉ちゃん~未来から聞いてるんだけど。いろいろ大変だったみたいね。い・ろ・い・ろ・と!」
「は……ははは」
冷や汗がダラダラと額を伝う。こうなったら逃れられない……。
「な・ん・で! 妹のわたしに相談してくれなかったのかな~? きっちりと話してくれるよね?」
迫力のあるオーラに押された私は、コクコクと頷くしかありませんって。だって、こういう時の桜花はヘビよりしつこいんだから。
「そう、それじゃあきょうだい水入らずでお話ししましょうね。じっくりと……ね?」
こ、怖い……底光りする桜花の目が。肉食獣どころかティラノザウルスかサメ並みですって。
「さぁ、いきましょうか。お姉ちゃん」
すごい力で引きずられていく時に、市場へ売られる子牛の気持ちがようく解りましたよ……。