身代わり王子にご用心
9月27日。今日は私が通った専門学校の、調理科夜間コースの卒業式。
去年の3月に知って二次募集で受験し、何とか合格してこの1年と半年間働きながら学んできた。
これで卒業時に無試験で調理師免許が取得できる。私が調べた限りでは、一番早くかつ確実な資格取得方法だった。
2年の実務経験の受験だと来年の調理師試験まで待たなければいけないし、不合格だと更に1年持ち越しになる。
初めて知った時はわざわざ転職しなくてもよかったかな……と悩んだけど。食堂という職場で学んだ技術や知識が実践できたし、また現場にいるからこそ様々な経験を重ねて、技術を磨けたと思う。
食堂で働きながら夜に学生をするのは大変だったけど、目標がある分やりがいはあって頑張れた。
ちなみに、学費は桜花用に貯めてた結婚資金を崩して使った。「自分のために使ってよ」と桜花が頑なに断ったから。
十年ぶりに迎える卒業式は、自分の人生としてはたぶん最後の経験になるだろう。
だから、なおのこと感慨深い。
「水科さん、おめでとう」
「ありがとう」
「主席卒業ってすごいわね」
「ううん、たまたま。それよりみんながいたから頑張ってこれたんだ。ありがとう」
同じ目標を持つ同級生達は、大半が私と同じ働く社会人。フルに働いた後に学生として二足のわらじを履いてきた。
栄養士の専門学校や短大に通いながら、この夜間部に通ったダブルスクールの学生もいるけど。どちらにしたって大変だったと思う。
短い間だけど共に学んだ学友達としばらくお喋りを楽しみ、開始30分前にホテルのロビーから会場へ入る。
受け付けで造花を渡されると、パーティーの時のことを思い出し涙ぐみそうになった。