身代わり王子にご用心
カイ王子の夢の一つが叶ったと、私も自分のことみたいに嬉しかった。
「と、桐子!」
「ん、なにさ?」
突然、大声が後ろから上がったからびっくりした。振り向けば、グレーのスーツを着た物部さんが真っ赤になって立ってる。
というか、ガチガチに緊張して震えてる?
「と、桐子! こ……今度の日曜日空いてるか?」
「ん~次の日曜日は夕方からなら空いてるけど……なに?」
曽我部さんがそう答えれば、物部さんはなぜか、はーふ~と深呼吸をし出す。そして、パンパンと頬を叩いて気合いを入れた後、ポケットから出したチケットを震える手で差し出した。
「よ……よかったら、俺と一緒に映画に行ってくれ!」
最初、曽我部さんはきょとんとした顔でチケットを見てたけど。次第に意味を理解したのか、真っ赤になって「ええっ!?」と叫んだ。
「あ、あんた本気? こんなガサツで女子力の欠片もないあたしにって……大丈夫なの?」
「桐子がいいんだ! その強さも逞しさも、潔さも! 度胸のあるところも」
「……って、それ! 女を褒める言葉じゃない~!」
曽我部さんはそうツッコミながらも……涙ぐみ物部さんに微笑んだ。
「ありがとう……こんなあたしでも好きになってくれて。すっごくうれしい! 実はあたしもあんたが……」
「え……それじゃあ」
物部さんがパッと顔を上げると、曽我部さんはペコリと頭を下げる。
「はい。こんなあたしで良ければよろしくね!」
「やったー!」
物部さんが曽我部さんを抱き上げ、くるくると回る。周囲からはおめでとうコールと囃し立てが混じって、すごい騒ぎになり盛り上がってた。