身代わり王子にご用心
ヴァルヌスにて
成田国際空港発の飛行機でドイツのミュンヘン国際空港に着く。12時間掛けてようやく到着した後に安定した床を歩くと、あちこちがガチガチにこわばってて。(エコノミークラスの宿命だわ)と軽い体操をして体を解した。
ミュンヘン国際空港経由で乗り換え、ヴァルヌス王国のカッツエ国際空港まではおおよそ30分。
ドイツのミュンヘンからヴァルヌスの首都のカッツエまではシャトルバスや国際鉄道もあるけれど、時間を考えてよりスムーズに移動できる手段を選んでおいた。
カッツエ国際空港に着くと、標高があるだけに肌寒い。日本では9月の末だとまだ残暑が厳しいけれど、カッツエはもう長袖でもいいくらい。雨が降れば必ず上着がいると聞いた。
空港からシャトルバスで首都カッツエへ向かう。カッツエ駅前に留まったバスから降り立った瞬間、何とも言えない感慨が胸に去来する。
(とうとう来たんだ……ヴァルヌスに)
大きなスーツケースを石畳に下ろし、バスターミナルから離れてしばらく歩く。夕焼けの綺麗な光が、街をほんのりと茜色に照らしだしてた。
(カイ王子……やっと来たよ、あなたに会いに)