身代わり王子にご用心
「うん、美味しい」
お味噌汁をちょっと味見をしてひとり頷いた。
やっぱりちゃんと出汁を取ると味が違うわ、と納得して一度火を落とす。それから炊き上がったご飯を先に混ぜておくことも忘れない。
ほうれん草とひじきの白あえと、あと焼き魚もオッケー。だし巻き卵は我ながら上手く焼けた。
ダイニングにある時計をチラッと見れば、もうすぐ6時になるところだった。
(そろそろ高宮さんを起こしにいかなきゃ)
1月の朝6時は外がまだまだ暗い。
もともと住んでいた木造アパートと違って、このマンションは廊下でさえ暖房が効いて寒さに震えることはない。
その違いを感じながら高宮さんに割り当てられた部屋の前に立ち、遠慮がちにドアを叩いて声をかけた。
「高宮さん……起きてますか? 朝食が出来ましたけど」