身代わり王子にご用心



『……この1ヶ月よく頑張ってきたな』

『え?』

『正直、東洋からろくに経験がない日本人の女が来ると聞いて、使い物になるかと危惧してたんだ。
確かに最初は役に立たなかったけど。毎日毎日残って夜遅くまで練習した後に新しいメニューを考えてたりしただろ?
よくやるな……と最近は感心してたんだ』

『アレックスさん……』


正直な話、認めてもらえるか不安で仕方なかった。自分では頑張っているつもりでも空回りしてないかな……って。


でも……


やっぱり、少しだけでも認められたら嬉しい。私と言う人間を受け入れてもらえて、居場所ができたということだから。


『まあ……その、なんだ。すぐ根を上げると思っていた厳しさについてきて、時にはシェフに食らいつく根性を見せたんだ。あんたはいい料理人になるよ』


照れ笑いを浮かべて頬を掻いたアレックスが、いつも理知的で大人びて見える彼と違って。なんだかかわいい。


『ふふっ……ありがとう』

『わ、笑うな! 認めた……って言っても、ほんの少しだけだからな!』

『うん、わかってるよ。それでも嬉しいよ、ありがとう』


私が微笑むと、アレックスも少しだけ表情を緩める。


『ま、なんにせよ。明日からも頑張ろうな』

『うん!』


受け入れてもらえた。私はここにいていいんだ。


その事実は、私にかつてない自信を与えてくれた。


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